核家族

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    〇(夜)東京都心、ビルの裏手で展示会場の撤去の為待機する、デザイン会社の同僚達、三木、中山、小暮。その傍にダンボールハウスがある。
         三木と新入社員小暮はただ目を伏せて黙っている、中山は携帯を操作

         遠くからお囃子が聞こえる

         間
         上手から人影(内田、見切れている)三木、気付く

    三木  「・・え?」

         小暮も見る、会釈
         内田メールを打ちながら入場

    内田  「お疲れっす」
    三木  「(会釈)っていうか・・え、何で?」
    内田  「え?(一寸不服そうに)いや、行ってくれって言われたんっすよ(小暮に気付き一応の愛想で)どうも」
    小暮  「(小さい声で)お疲れ様です」
    三木  「え、部長に?」
    内田  「(苦笑)うん」
    三木  「あぁ、そうなんだ」
    内田  「そうなんっすよ」
    三木  「・・すみませんね」
    内田  「(事務的に)いいえ(どういたしまして)」
    三木  「・・」
    内田  「え、で?(携帯の操作を一時停止)何?まだ大分あれ、かかりそう?(展示会の撤去)」
    三木  「・・どうだろ」
    内田  「ふーん」
    三木  「でもまぁ・・もうちょいだと思うけど・・一寸分かんない・・御免ね」
    内田  「いやいや・・それはいいですけど(携帯をしまう)」
    三木  「・・」

         内田、鞄からペットボトル(水)を取り出し飲む

    内田  「(ため息)あぁ・・腹減ったな・・マジで・・また食い損ねてさ、昼飯(再び飲みだす)」
    三木  「何?忙しかったの?」
    内田  「(頷く、飲み終えため息)」
    三木  「あ・・あぁじゃあどうぞ、食べてきて・・うん」
    内田  「(蓋を閉める)大丈夫大丈夫・・耐えますから」
    三木  「グミならあるけど」
    内田  「(苦笑して首を振る)グミ?あぁ、いいいい(気を使ってくれて)うん、ありがと」
    三木  「(軽く微笑む)」

         間

    内田  「あ、やっぱ貰える?」
    三木  「あぁ・・(鞄からグミを出し)全部いいから」
    内田  「どうも」

         内田、黙々と食べる

    三木  「あ、昨日すみませんね・・ご心配おかけして(母が倒れたので早退した)」
    内田  「あぁ、全然全然(影響ないし)・・え、結局大したあれじゃなかったんでしょ?」
    三木  「・・まぁ・・うん」
    内田  「(頷いてから)ねぇ・・よかったじゃん・・」
    三木  「(軽く微笑んで会釈)」
    内田  「よかったよかった」

         間

    内田  「(鼻をすする)え、で何?今日直接向こうから来たの?」
    三木  「(吹き出す)」
    小暮  「(微笑む)」
    内田  「え?何?」
    三木  「それがさ、うん・・夜行バスであれしたからさ、結構早く着いたのよ・・じゃあ一旦帰ろうと思って中央線乗ったらさ、起きたら甲府にいたの」
    内田  「え、マジで?」
    三木  「そうよ・・もうビックリしちゃった」
    内田  「いや、そりゃビックリするでしょ」
    三木  「(苦笑)ねぇ」
    内田  「はぁ・・」
    三木  「(苦笑)」
    内田  「・・そうっすか・・へぇ・・」
    三木  「・・うん・・」
    内田  「いや、でもさ、ほら・・今日もともと来ないような話だったからさ・・(小暮に)ねぇ」
    小暮  「ええ(会釈)」
    三木  「あぁ・・(答えに困る。意味有りげに微笑む)」
    内田  「やっぱそういうところ偉いよな(時計を見て軽いため息)」
    三木  「(苦笑)」

         間
         内田、中山についでという感じで

    内田  「あ、そういえば中山君さ、今日どうだった?」
    中山  「え・・何がです」
    内田  「いや・・ほら、一人でさ、大丈夫だったのかなってね、うん」
    中山  「あぁ・・まぁ・・ええ、何とか」
    内田  「え、でも結構大変だったでしょ?」
    中山  「・・って程でも、なかったっすよ・・ええ」

         間

    内田  「・・あ、そう・・」
    中山  「(鼻をすする)はい」
    内田  「まぁいけど・・」
    中山  「・・」
    内田  「あ、で、そうだ・・あのほら・・今日あれ行ってくれた?あの・・先週頼んどいたさ・・マリーって店のさ、引き取り・・」
    中山  「パネルとスポット(ライト)」
    内田  「そうそう」
    中山  「行きましたよ、午前中」
    内田  「あ・・ありがと」
    中山  「(会釈)」
    内田  「いや、ほら、今朝言うの忘れてたからさ・・ひょっとしてあれかなと思って・・うん、昼前に電話したんだけど・・切ってたでしょ、電源」
    中山  「あぁすみません・・一寸・・ええ、運転してたんで」
    内田  「あぁ、うん、それはいいんだけど」
    中山  「っていうか・・留守電入れてないっすよね」
    内田  「あぁ、まぁほら、中山君そういうとこしっかりしてるからさ・・まぁ大丈夫かなって・・うん」
    中山  「(苦笑)」
    内田  「助かりました、本当」
    中山  「あぁ、別に・・はい」

         間

    三木  「え、何?マリーってあそこ?千駄ヶ谷小の裏の?」
    内田  「そう、今月で立ち退きなんだってさ」
    三木  「・・へぇ、そうなんだ」
    内田  「うん」
    三木  「(鼻をすすり)何か・・最近そういうの多くない」
    内田  「多いね」
    三木  「・・」
    内田  「うん、多い多い」

         間
         内田腕時計を見る

    内田  「(ため息)これあと一時間じゃ終わらないよね」
    三木  「え、何で」
    内田  「いや・・九時からさ、総合格闘技やるからさ・・出来れば見たいなぁって思ってたのよ・・うん」
    中山  「・・」
    三木  「あ・・何、そういうの好きなんだ」
    内田  「うん・・やってたら見ちゃうね・・」
    三木  「へぇ・・でも・・うん・・どうかね」
    内田  「(苦笑)だよな、やっぱ」
    中山  「(淡々と)あぁ・・あれだったらいいっすよ、皆さん無理しないで」
    内田  「・・え、何が?」
    中山  「バラシ、一人で出来ますから・・ええ」
    内田  「・・いや、いいよいいよ・・別にそういう意味で言ったんじゃないし・・」
    中山  「あぁ、でも大丈夫っすよ、本当」
    内田  「いや・・でもさ・・結構あるんでしょ・・(三木に)ねぇ」
    三木  「(苦笑)」
    中山  「いやいや・・全然問題ないっすよ、本当マジで・・だから・・ええ、どうぞ」
    三木  「・・」



    内田  「(三木、小暮に)ですって・・」
    三木  「(色んな意味で)でもうん・・私もあれ、ここ最後だからさ、挨拶しとかないと・・そういうの常識だし」
    内田  「・・」
    三木  「ありがとね、気使ってくれて」
    中山  「っていうか、営業さんに迷惑かけちゃあれかなって思ってたんで」
    三木  「何で・・そんなの関係ないわよ、(内田に)ねぇ」
    内田  「(含みが感じられる相槌)そうですよ、うん」
    中山  「・・はぁ」
    三木  「(苦笑)」
    小暮  「・・」

         間

    三木  「あ、で彼結局どうしたの」
    中山  「(自分が聞かれていると気付いてない)」
    三木  「ねぇ、中山君さ」
    中山  「え?」
    三木  「堀君結局あれ・・何にも無いの?連絡とか」
    中山  「・・(息を吸う音、そして吐き出すように)俺の方には・・ええ」
    三木  「(何か言いたげに)あ、そう・・」
    中山  「ええ」
    三木  「・・(頷く)」
    内田  「でもさ、いくらバイトだからってさ、こういう事
    平気でやられちゃうと困るよね、正直」
    三木  「でも(咳払い)きっと彼もさ・・嫌になっちゃったのよ。人も増やしてくれないわ時給も上がんないわでさ・・いいように使われて」
    内田  「え、何?それは本人から聞いたの?」
    三木  「っていうか・・きっとそうでしょ」
    中山  「・・」
    三木  「まぁ明日かな・・明日も連絡なかったら・・まぁ・・そういう事でしょ」
    内田  「(苦笑)」

         間

    内田  「(ため息)まぁ、中山君もさ・・何かあるんだったら言ってよ・・俺もさ・・力になるから」
    中山  「はぁ」
    内田  「本当言ってよ。ね?」
    中山  「有難うございます」
    内田  「・・」

         間
         小暮が話に入れないのに気を使って

    内田  「小暮さんどうですか?」
    小暮  「(急にふられたので少し間)はい?」
    内田  「慣れました、仕事は」
    小暮  「いえいえ全然ですよ・・全然駄目です・・」
    三木  「でも彼女あれよ、凄いハキハキしてるから印象いいと思う。お客さんに」
    内田  「あぁ、いいじゃないですか・・」
    小暮  「(首を振る)いやいやそんな事ないです・・自分でも何言ってるか分からないですし・・顔も引きつっちゃって・・」
    三木  「そんな事ないわよ・・全然気にならない・・うん、平気平気」
    内田  「(ニコニコして頷いている、一度時計を気にする)」
    小暮  「うーん・・でも・・正直どうなんですかね・・」
    内田  「(悟ったように)うん・・大丈夫です、慣れですよ、慣れ・・慣れちゃえばもう楽勝ですよ」
    小暮  「(苦笑、首を傾げる)」
    内田  「俺らだってねぇ・・全然だったよね」
    三木  「(頷く)」
    小暮  「はぁ・・」
    内田  「(小暮のそういった反応など気にかけてない)まぁほら・・今のうちに?この立派な先輩の?あれを盗めば(フフフ)ね・・大丈夫っすから・・うん」
    三木  「(白々しい言葉に鼻で笑う)」
    内田  「(わき腹を掻く)まぁ、本当頑張ってください。期待してますから」
    小暮  「(苦い顔、一寸首を傾げながらお辞儀)はい・・」


         間

    三木  「・・(上手を見る、そこには高級車が駐車している)ところでさ(内田に)あの白い車誰のか知ってる?」
    内田  「え?(見る)・・ドゥ・ハウスの誰か?」
    三木  「そう」
    内田  「え、誰?」
    三木  「沢田さん」
    内田  「あぁ・・あの人か・・へぇ・・いいの乗ってるな・・はぁ・・」
    三木  「え、ちなみにああいうのってさ、幾ら位するの?」
    内田  「さぁ・・」

         間

    内田  「(鼻をすすり)まぁ相当するんじゃないの?」
    三木  「・・」
    内田  「え、何で?」
    三木  「え・・だって・・あの人まだ・・30そこそこだと思うよ・・一体幾ら貰ってるんだろって」
    内田  「・・(苦笑)さぁ」
    三木  「・・」
    内田  「(鼻をすする)」

         間

    三木  「(腕を前に出した背伸びをし、脱力、ため息、鼻をすする)」
    内田  「(苦笑、腕時計を見る。ため息)」

         間

    内田  「腹減ったな・・」
    三木  「だから食べてくればって」
    内田  「(生返事)うん・・」

         内田、下手のダンボールハウスに近づき、中腰で中を覗く

    三木  「(内田を見るが特に反応なし)」
    内田  「・・」
    三木  「・・(ため息)」

         間

    内田  「・・」
    三木  「・・」

         間

    三木  「興味でもあるんですか?」
    内田  「え・・あぁ・・そういうわけじゃないけど」
    三木  「・・」

         間

    内田  「何、止めとけって?」
    三木  「さぁ・・」
    内田  「(苦笑、再びダンボールハウスを覗き込む)」
    三木  「・・(苦笑)」

         間

    中山  「(立ち上がり)大丈夫ですよね・・一寸位あれしてても・・」
    三木  「え?あぁ・・どうぞ・・うん」
    中山  「すんません・・近くにいますんで・・もしあれだたら電話で(連絡してもらえれば)」
    三木  「あぁ・・はいはい・・どうぞどうぞ」
    三木  「・・(腕時計を見る)」

         間

    内田  「またパチンコかな、彼」
    三木  「(苦笑)」
    内田  「それかゲーセンか・・間違いなくどっちかだよね・・」
    三木  「さぁ・・」
    小暮  「・・」
    内田  「(首を掻きだす)まぁいいけど」
    三木  「・・」

         間

    内田  「(小暮に)彼・・そんな感じです」
    小暮  「え?はぁ(会釈)」

         間

    内田  「そういえば小暮さん何か趣味とかあるんですか?」
    小暮  「あぁ・・特にこれといったものは」
    内田  「へぇ・・無いんだ・・」
    小暮  「ええ」
    内田  「・・え?じゃあ休みの日とか何してるの?」
    小暮  「・・まぁ・・映画観たり・・図書館行ったりだとか・・まぁその位ですね」
    内田  「ちゃんとあるじゃないですか、趣味」
    小暮  「(苦笑)どうなんですかね・・」
    内田  「・・いやいや、もう立派な趣味ですよ」 
    小暮  「(あまり納得がいかないような会釈)・・」
    内田  「へぇ・・そっかそっか・・」

         間
         内田ようやくダンボールハウスから離れる

    内田  「(沢田の車をみる)・・」

         間

    内田  「え、そう言えば実家は寄ったの?」
    三木  「え?(苦笑)あぁ、そんな時間なかった」
    内田  「・・」
    三木  「あ、でも皆に会えたから・・弟の嫁さんにもね、うん・・挨拶できたし・・そういう意味では・・うん・・そう・・」
    内田  「あ、会った事なかったんだ?」
    三木  「そう、だってうちの弟出来ちゃった結婚なのよ・・」
    内田  「え、いつ?」
    三木  「本当最近」
    内田  「(頷く)」
    三木  「あそうだ、御免ね・・お土産」
    内田  「あぁいいよ、そんな・・」
    三木  「・・」

         間

    内田  「え、家の人に言った?辞めるって」
    三木  「え?」
    内田  「だ(から)仕事さ・・辞めるって」
    三木  「(苦笑)言わないって・・そんな事わざわざ」
    小暮  「・・」
    内田  「・・へぇ」

         照明、三木だけを照らす

    三木  「・・うん・・そんな・・ほら・・言える状況じゃなかったし・・そうよ・・言うわけないじゃん」

         三木の台詞の最中に内田、小暮退場、弟(中山)入場
         三木の地元の県立病院駐車場という設定
         間
         
    弟   「・・そうなんだ」
    姉(三木)「・・うん」

         間

    姉   「言わないでいいからね」
    弟   「(苦笑)」
    姉   「・・ね」
    弟   「はい」

         間

    弟   「え、結局何年いたの?そこ」
    姉   「え?」
    弟   「何年いたの?そこ」
    姉   「・・(指で数える)九年かな?うん・・九年いたね」
    弟   「(頷く)」
    姉   「九年・・」
    弟   「(苦笑)」

         間
         弟咳払い

    弟   「次もあれ?あっちで探すの?」
    姉   「え?」
    弟   「あっちで探すのかって、仕事」
    姉   「あぁ・・だろうね」
    弟   「・・」
    姉   「うん・・」
    弟   「・・ふーん(頷く)」

         間、二人して頷いている

    弟   「え・・で、お金は?」
    姉   「え?」
    弟   「お金さ・・余裕あるの?」
    姉   「(鼻をすする)あぁ・・まぁ・・少しは」
    弟   「・・(頷く)」
    姉   「貸してくれとか言わないよ」
    弟   「あぁ、別にそういう意味で言ったんじゃないよ・・ただ・・うん・・気になったからさ」
    姉   「・・ありがと」
    弟   「(会釈)」

         間

    弟   「(鼻をすする)でもまぁ・・早く見つかるといいね」
    姉   「(苦笑)だね・・」

         間、頷く二人
         姉、後ろ(病院)を見上げる

    姉   「まぁでも・・(ため息、今回お互いが反省する面やら、大した状況ではないなどといった安堵感をこめて)まぁ・・そうだね・・(微笑みと苦笑、まばたきを数回・・頷く)ねぇ」
    弟   「(つられて微笑む)え?・・何?」
    姉   「いやいや・・うん・・」
    弟   「・・え?何だよ?」
    姉   「(耳の裏を掻き始める)いや・・一つ気になったんだけどさ・・言っていい?」
    弟   「あぁ」
    姉   「・・あれ・お母さんさ・だいぶ前からさ、調子良くないような事言ってたんでしょ?」
    弟   「・・あぁ・・だね・・うん・・」
    姉   「え、で何?全然気にしないんだ、そういうの」
    弟   「はぁ?っていうか本人が平気だって言うんだもん、仕方ないじゃない・・」
    姉   「・・」
    弟   「んな俺らだってねぇ・・どんなもんか分からないしさ・・そんなの」

         間

    姉   「(手を見る)まぁそりゃそうだ」
    姉   「・・」
    弟   「(ため息)」
    姉   「・・すみませんでしたね、余計な事言って」
    弟   「あぁ・・別に・・いいっすよ」

         間

    姉   「ねぇ・・これからあんたらもさ、大変だっていうのに・・」
    弟   「あぁ・・(頷く)うん、大丈夫っす・・」
    姉   「ね・・私もさ、本当はちょくちょく顔出すべきなんだろうけど」
    弟   「いいいいいい、うん・・本当大丈夫だから」
    姉   「(苦笑)・・」

         間

    姉   「あ、そうだ、もう一つあった」
    弟   「何すか」
    姉   「何?お父さんから聞いたんだけどさ・・さえ子さんが連れてきてくれたんだって?病院」
    弟   「あぁ・・だね」
    姉   「(呆れる)だっからさ」
    弟   「あ?」
    姉   「ね、紹介してくれた時でいいんだから、そういうのもちゃんと言ってよ、頼むから」
    弟   「・・あぁ・・」
    姉   「ね、ここの家族は何だって思われるわよ。いいの、それで?」
    弟   「(苦笑)」
    姉   「・・自分の事でやっとなんだからさ、さえ子さんだって・・」
    弟   「(頷く)そうっすね」

         間

    弟   「だから・・(咳払い)まぁ・・俺も親父も・・うん・・出来る限りの事はね・・やりますから」
    姉   「・・頼むね、本当」

         間

    姉   「まぁとりあえず・・大したあれじゃなくって・・うん・・よかったよかった」
    弟   「・・すみませんでしたね・・わざわざ」
    姉   「いえいえ・・こっちこそねぇ・・何にもお役に立てませんで」
    弟   「だから(咳払い)まぁ、こっちの事はあれだから、とりあえず大丈夫だから・・うん・・自分の事をさ、気にしてくださいよ(肘を掻く)」

         間

    姉   「・・まぁそう言っていただけると・・本当助かる」
    弟   「(肘を見ながら会釈)」
    姉   「・・」

         姉、弟の顔を見る

    弟   「ん?」
    姉   「あれ、で、いつだっけ?さえ子さん・・予定日」
    弟   「あぁ・・一応・・10月の・・25・・かな・・うん」
    姉   「どっち」
    弟   「男」
    姉   「・・へぇ・・そうなんだ・・名前は?」
    弟   「え?」
    姉   「名前」
    弟   「・・まだ」
    姉   「(頷く)」

         間

    弟   「(鼻をすする)あ・・で・・式はさ、挙げないから」
    姉   「あぁ、聞いた・・うん・・まぁいいんじゃない?」
    弟   「うん・・」

         間

    姉   「あ、でもそうよ、お祝いあげないと」
    弟   「あ・・ありがと・・あぁでも仕事決まってからでいいから、うん」
    姉   「あぁ・・まぁそうしてもらえれば・・助かるかな」
    弟   「(足元をならす)まぁいつでも・・いいっすから(鼻をすする)」

         少し和んだ空気

    弟   「そういえば、姉ちゃんの部屋さ、使わせてもらってるよ」
    姉   「部屋?(苦笑)あぁ・・(しゃがむ)どうにでもどうぞ」
    弟   「うん」
    姉   「っていうか私の部屋なんてさ(一度瞬き)・・(苦笑)まだあるんだ」
    弟   「(微笑む)ありますよ」
    姉   「・・」

         間
         弟病院を見上げながらしゃがむ

    弟   「俺らさ、ここで生まれたんでしょ」
    姉   「(姉も見上げる)・・だね」

         間

    弟   「来年移転だって」
    妹   「(頷く)へぇ・・」
    弟   「うん・・」

         間

    姉   「っていうか、随分変わっちゃたよね、ここら辺も・・」
    弟   「(微笑む)」
    姉   「駅だってさ・・今っぽいし(フフフ)」
    弟   「何?向こうと変わらないって?」
    姉   「(苦笑)そこまではあれだけどさ、何だろ・・自分の田舎だって言うのにさ・・何かさ・・(言葉が見つからず苦笑)ねぇ」
    弟   「(微笑む)え?」
    姉   「いや、うん、何でもない」
    弟   「・・」

         間
         弟腕時計を見て立ち上がる

    弟   「さてと・・」
    姉   「・・」
    弟   「え、今日あれだろ?泊まってくんだろ?」
    姉   「え?」
    弟   「(うつむいて)一応ご飯もさ、用意してるから・・うん」
    姉   「・・」
    弟   「・・(鼻をすする)」
    弟   「・・あ、そっか・・さえ子さんがあれだ、やってくれてるんだ」
    弟   「うん」
    姉   「へぇ(頷く)・・(爪をいじる)そっかそっか・・へぇ・・じゃあよかったね・・そういう意味では」
    弟   「(苦笑)・・」

         間

    弟   「っていうか、行くでしょ?」
    姉   「あぁ、そっか・・どうしようかな・・」
    弟   「何?(ポケットに手を突っ込む)」
    姉   「・・いや・・うん・・私あれなんだよね・・そう・・明日ちゃんと出るって言っちゃったのよ・・だからさ・・うん・・どうしよっかなと思って」

         間

    弟   「・・(軽く頷く)」
    姉   「・・そうなのよ・・」
    弟   「(頷く)」

         間
         
    弟   「・・(頷いている)じゃあまぁ仕方ないでしょ」
    姉   「うん、本当御免ね」
    弟   「いやいや、それはねぇ・・こっちが勝手に・・あれしてただけですから・・全然気にしないで」
    姉   「っていうか調子がね・・あんまよくなくてさ」
    弟   「分かった分かった、うん、うん・・無理しないでいいから・・」

         間

    姉   「じゃあ・・さえ子さんに宜しく言っといて・・ね」
    弟   「・・了解です」
    姉   「・・」
    弟   「(腕時計を見る)っていうか電車大丈夫?」
    姉   「え?」
    弟   「電車」
    姉   「あぁ・・あると思うんだ・・今行けば・・多分」
    弟   「じゃあ早く行こうよ(車で駅まで9」
    姉   「・・あぁいい、うん、タクシーであれするから」
    弟   「いいよ、何で」
    姉   「だって逆じゃん・・」
    弟   「・・」
    姉   「いいから早く行きなって、ね?(さえ子さん)待ってるから」

         間

    弟   「・・(軽く呆れる)」
    姉   「ほら」
    弟   「・・じゃあ・・悪いけど」
    姉   「うん、何かあったら連絡して」
    弟   「(頷く)」

         間

    弟   「じゃあ・・本当たまにはさ・・顔出せよ」
    姉   「・・そうね、うん」

         間

    姉   「あんたも頑張って」
    弟   「(頷く)姉ちゃんも」
    姉   「・・はい」

         間

    姉   「ほら」
    弟   「あぁ・・じゃあまた(とぼとぼと退場)」
    姉   「うん」    
         照明、姉だけを照らす
         内田、小暮入場

    姉   「・・(ため息)」

         明かり変わる

    内田  「え、小暮さんはお酒は呑めるの?」

         三木、そのままの姿勢

    小暮  「少しだけなら・・」
    内田  「じゃあ居酒屋とかでいいかな?」
    小暮  「・・ええ」
    内田  「そっか・・じゃあ・・鳥肌にしとこうか・・(三木に)ねぇ」
    三木  「(我に帰る)え?」
    内田  「場所さ、鳥肌でいいかな?」
    三木  「鳥肌ってあれ?松尾さんの送別会やったとこ?」
    内田  「そうそうそうそう」
    三木  「わかった・・あれだよね、再来週の金曜・・」
    内田  「うん・・じゃあ言っとくわ」
    三木  「(苦笑)っていうか・・もしあれだったらいいよ・・そんな全員に声かけなくても」
    内田  「え?」
    三木  「・・だから・・来たくない人だっているだろうし・・」
    内田  「(あの人の事かと思いつつも)うん・・大丈夫大丈夫・・こっちもさ・・軽く・・どうですか?みたいにね・・聞くだけだから」
    三木  「すみませんけど」
    内田  「(苦笑、小暮が気になるので)ねぇ・・本当・・いろいろありますよ・・ねぇ(フフフ)」
    三木  「・・」
    小暮  「え・・皆さんよく呑みに行かれるんですか?」
    内田  「え?呑み?は・・全く無いっすね・・そういう特別なあれ?以外は・・(三木に)ね?」
    三木  「うん」
    小暮  「(頷く)」
    内田  「え?何で?」
    小暮  「いえいえ・・ただ・・ええ」

         間
         内田、小暮の感じから、そういう付き合いは苦手なんだろうなと思う

    内田  「・・」
    小暮  「・・」
    内田  「え、小暮さんてさ、何処の人」
    小暮  「うち名古屋です」
    内田  「へぇ、名古屋なんだ・・」
    小暮  「ええ」
    内田  「へぇ、そうなんだ・・名古屋か・・」



    内田  「あ、じゃあ学校がこっちだったとか?」
    小暮  「・・ええ・・まぁ専門学校でしたけど」
    内田  「(頷く)あ、で・・それでそのまま・・って感じで」
    小暮  「ええ」
    内田  「へぇ・・え、ちなみにどういう学校・・」
    小暮  「(ためらう)美容師の・・ええ」
    内田  「え、じゃあ前美容師やってたの?」
    小暮  「っていうか・・途中で辞めちゃったんですよ、学校」
    内田  「・・(大きく三度程頷く)あ、そうなんだ」
    小暮  「ええ・・まぁ・・はい」
    内田  「(何度か頷く)・・へぇ」
    小暮  「・・」

         間

    内田  「え、兄弟・・は?」
    小暮  「・・兄が一人・・やっぱりこっちで・・ええ・・働いてます」
    内田  「へぇ、そっかそっか・・へぇ・・」
    小暮  「はい」
    内田  「あぁ・・じゃあ寂しいだろうね、向こうのね、ご両親は」
    小暮  「あ、でも母はもう・・大分前に亡くなったんで」
    内田  「あ・・あぁ・・そうっすか・・あぁ、すみません」
    小暮  「いいんですいいんです、全然・・はい」
    内田  「・・でも・・ね、だったら親父さん尚更寂しいだろうね」
    小暮  「(苦笑)」
    内田  「そうですよ・・へぇ・・そっか・・」
    小暮  「はい」
    内田  「え、帰ったりはしてる?」
    小暮  「・・いえ・・もう全然」
    内田  「あぁ・・(時計を見る)あ、そうですか・・」
    小暮  「(頷く)」
    内田  「まぁでも・・ね、帰ってあげるとお父さん喜ぶよ」
    小暮  「(微妙な笑顔)」
    内田  「まぁ俺も人の事言えないけど・・」

         間、話も詰まってきたので

    内田  「(三木に)あ、じゃあ一寸見てくる」
    三木  「うん」
    小暮  「(会釈)」

         間

    三木  「帰って来いとか言われないの?」
    小暮  「・・言われますね、やっぱり」
    三木  「(苦笑)でも帰ろうとは思わないんだ」
    小暮  「・・(おでこを掻きながら)ですね、今のところ」

         間

    三木  「(鼻をすすり)お兄さんとは何?こっちで会ったりするの?」
    小暮  「え?」
    三木  「お兄さんとは会ったりする?こっちで」
    小暮  「(複雑な笑み)・・うちそういうの無いんですよ」
    三木  「あ、そう・・」

         明かり、小暮を照らす
         三木退場

    小暮  「仲がどうってあれは無いんですけど・・特に会う理由もないんで・・そうなんです」

         暗くなる
         小暮のアパート前の道路という設定
         上袖から兄(内田)の声

    兄   「おい、忍・・おい」

         明るくなる、兄入場

    兄   「よっ」
    妹(小暮)「(振り向いた姿勢で)え?(一寸理解出来ない)・・え、何で?(父親の顔が浮かび)・・え、どうしたの?」
    兄   「どうしたのじゃないつうの」
    妹   「・・え?お父さん?(様子を見に行ってくれと)」
    兄   「(苦笑)だよ・・朝五時だぞ、かかってきたの・・何かと思ったよ」
    妹   「はぁ・・」
    兄   「・・」
    妹   「・・」
    兄   「だから電話位出てやってくれよ・・頼むから、な?」
    妹   「・・」
    妹   「・・(鼻をすする)すみません」
    兄   「(軽く)いやいや、まぁいいけど」

         間

    妹   「え?大分待ってた?」
    兄   「あぁ・・いや、そうでもない」
    妹   「あ・・じゃあ・・(よかった)」

         間

    兄   「何?何処か行ってたんだ」
    妹   「え?」
    兄   「何処か行ってたんですかって」
    妹   「うん、そう・・映画観に」
    兄   「へぇ・・え、どんな映画?」
    妹   「え?」
    兄   「どんな映画かって」
    妹   「何か・・あんまよく分かんなかった・・」
    兄   「・・そうっすか」

         間

    妹   「(笑顔で)何か・・本当久ぶりだよね」
    兄   「(笑顔で呆れる)」
    妹   「え?」
    兄   「お前さ・・まぁいいや・・あぁ・・そうね・・うん・・はい、久しぶりっすね」
    妹   「うん・・」

         間

    兄   「元気か?」
    妹   「うん、お蔭様で・・え、お兄ちゃんは」
    兄   「元気ですよ」
    妹   「・・そう」

         間

    兄   「あれ?お前こっち来て何年だっけ?」
    妹   「・・っと七年・・かな?」
    兄   「七年?・・」
    妹   「そう・・うん・・」
    兄   「なぁ・・何処かで会いそうなもんだけどな」
    妹   「(微笑む)」
    兄   「そっかそっか・・」
    妹   「・・」
    兄   「(アパートを見上げて)何?あのアパート?」
    妹   「ん?あ、そう・・二階の角」
    兄   「ふーん・・」
    妹   「・・」
    兄   「・・部屋は?」
    妹   「・・一応2K」
    兄   「じゃなくて幾らよ?」
    妹   「え?」
    兄   「幾らかって・・」
    妹   「・・六万八千(円)・・うん」
    兄   「・・」
    妹   「・・そう」
    兄   「(頷く)」

         間

    妹   「あ・・あのどうぞ」
    兄   「え?」
    妹   「もしよかったら(部屋に)」
    兄   「あぁ、いいいい・・あんま時間ないから・・また今度で」
    妹   「え?まだ仕事?(の途中?)」
    兄    「違う違う・・一寸用事がね、あるんですよ」
    妹   「・・(頷く)」
    兄   「(苦笑)」
    妹   「(頷く)」

         間

    妹   「え?ここら辺初めて?」
    兄   「いや・・二三度あるよ、あの・・友達がさ・・こっち住んでたかたら、うん」
    妹   「・・へぇ(軽く頷く)え?どこ?」
    兄   「っとね・・商店街のさ、真ん中あたりにさ、みずほのATMあるだろ?そこのさ、右曲がってすぐのさ、凄いボロアパート」
    妹   「へぇ・・そうなんだ」
    兄   「うん、でももう何か・・駐車場になってたな」
    妹   「(頷く)」
    兄   「うん」

         間

    妹   「え?じゃあその人は?」
    兄   「クニ帰った・・ね・・多分」
    妹   「ふーん・・」

         間

    妹   「あれ・・詳しく聞いた?お父さんから」
    兄   「え?・・あぁ・・何となくね・・うん」
    妹   「(苦笑)・・」
    兄   「何?転々としてるんだって?仕事」
    妹   「・・(鼻をすすり、指で軽く押さえる)」

         間

    兄   「まぁいいんじゃないっすか?そういうのも」
    妹   「・・(その指を見る)」

         間

    兄   「何?次はもう探してるの?」
    妹   「え?」
    兄   「次探してるのかって」
    妹   「あぁ・・うん、昨日一応・・面接行った」
    兄   「え?どういう・・」
    妹   「何か・・デザイン関係の?・・うん・・」
    兄   「(苦笑)っていうかさ・・お前出来るの?」
    妹   「何か・・うん、興味さえあればって・・言ってくれて・・今週中に連絡するって・・」
    兄   「(頷く)あ、そうなんだ・・」
    妹   「うん・・」
    兄   「ふーん・・」
    妹   「(鼻をすする)」
    兄   「まぁそういうのも報告しといてやれよ、安心するからさ」
    妹   「うん・・」

         間

    妹   「(苦笑)」
    兄   「え?」
    妹   「おかしいよね、お父さん(フフフ)」
    兄   「・・」
    妹   「(ため息)だって(仕事)辞めるとさ、毎日かけてくるんだよ」
    兄   「(苦笑)じゃあ黙ってりゃいいじゃん」
    妹   「・・まぁそうだけど・・そうだね」
    兄   「そうだよ・・」

         間

    妹   「(ため息)すみませんでしたね、ご迷惑おかけして」
    兄   「それはいいけど・・まぁ、頑張ってくださいよ」
    妹   「ありがと」

         間

    兄   「(腰に手を当ててため息)まぁ・・俺からはそんなもんかな・・うん」
    妹   「(会釈)」
    兄   「(うつむたまま鼻をすする)」
    妹   「(鼻をすする)わざわざ・・本当どうも」
    兄   「いいえ、どういたしまして」

         間

    妹   「あれだったら本当、お茶でも」
    兄   「(苦笑)いいいい・・」

         間

    兄   「あ、でさ・・あれなんだよ・・あの・・近いうちさ、親父さ、こっちに呼ぼうと思うんだ、うん」
    妹   「・・(頷く)」
    兄   「だから・・もしあれだったらどうよ?一緒に、食事でも・・」
    妹   「あぁ・・」
    兄   「(鼻をすする)」
    妹   「え、三人で?」
    兄   「ん?(眉毛を掻きながら)あぁ・・っていうかさ・・彼女?をね、うん・・そろそろ紹介しようと思うんですよ・・まぁ・・とりあえず挨拶程度にね」
    妹   「・・」
    兄   「うん・・そうなんですよ・・だからついでにね、お前もどうかなって思ってさ」
    妹   「(頷く)」

         間

    妹   「とりあえず・・うん・・いい、やめとく」

         間

    兄   「あ、そう」
    妹   「うん、ごめん・・」

         間

    兄   「・・(首を掻く)分かりました」
    妹   「ねぇ・・私もそういうの・・苦手だし・・うん・・正式なあれじゃないんでしょ?」
    兄   「(苦笑)」
    妹   「うん・・じゃあ尚更・・」

         間

    兄   「・・了解です」
    妹   「また・・機会があったら」
    兄   「あぁ・・そうね・・」

         間

    兄   「(ため息)ま、そんなところですかね」
    妹   「・・うん」

         間
         アパートを見上げて

    兄   「じゃあそろそろ行くわ」
    妹   「ありがとね、本当」

         間

    兄   「じゃあ・・まぁ・・頑張ってください」
    妹   「うん・・お兄ちゃんも」
    兄   「有難うございます」

         間

    兄   「まぁとりあえず電話入といてくれよ・・な」
    妹   「はい」
    兄   「じゃあ・・また」
    妹   「うん・・また」

         兄退場
         照明、妹(小暮)だけを照らす
         三木、中山入場

    小暮  「(ため息)」
    三木  「小暮さん」

         明るくなる、中山は携帯を操作している

    三木  「ねぇ小暮さん」
    小暮  「あ、はい」
    三木  「ちょっと(会場)見てきてくれる?」
    小暮  「はい(退場)」
    三木  「ありがとね」

         間

    三木  「・・」
    中山  「・・」
    三木  「あれ・・堀君ってさ・・やっぱもう来ないのかな?」
    中山  「あぁ・・」
    三木  「・・」
    中山  「何か・・もっと割のいい仕事をしたいとは言ってましたけど・・ええ」
    三木  「・・ふーん(頷く)」
    中山  「・・」
    三木  「まぁでもそれはそれだよね・・うん」
    中山  「・・」

         間

    三木  「悪いんだけどさ・・一寸聞いてみてもらえない?実際どうなのか」
    中山  「え?(乗り気がしない、しかしそういう表情は見せずに)・・俺からですか?」
    三木  「うん、あれだったらメールでいいから」
    中山  「あぁ・・っていうか、彼のアドレス知らないっすよ」
    三木  「え?・・本当に?」
    中山  「ええ」
    三木  「何で?」
    中山  「何でって言われても・・(困惑をアピール)はぁ」

         間

    三木  「ふーん・・」
    中山  「すみません、何か・・(役に立たなくって)」
    三木  「いやいや・・それはいいんだけど・・そうなんだ」
    中山  「(会釈)」
    三木  「・・」

         三木、考えてみれば確かに自分自身も内田のアドレスは知らないし、深い付き合いもしていないという事を認識させられる。

    三木  「話し変わるけどさ・・中山君自身はどうするの?これから」
    中山  「え?・・俺ですか?」
    三木  「うん・・何かバイトでいる意味があるのかなって思ってさ・・あれだったらちゃんと就職すればいいのにってさ・・思って」
    中山  「・・(頬を掻く)」
    三木  「何?何かやりたい事でもあるの?」
    中山  「え?」
    三木  「やりたい事がね・・あるのかなって・・」
    中山  「・・」
         中山に照明
         三木退場

    中山  「そういうのは特にないっすね(頷く)ないです」

         
         明かり変わる とある駅の外という設定
         弟(中山)携帯をいじっている
         義姉(小暮)登場 
    姉   「(弟の肩を叩く)・・」
    弟   「(携帯をしまい、立ち上がる)あ、どうも・・お久し振りで」
    姉   「どうも・・え、早いじゃん」
    弟   「あぁ・・ええ・・」
    姉   「(微笑む)・・」
    弟   「どうもすみません・・わざわざ」
    姉   「いいのいいの、うん・・丁度近くでさ・・自分のあれもあるし」
    弟   「(照れ笑い)」
    姉   「え、痩せた?」
    弟   「(苦笑)そうっすか?」
    姉   「うん・、ちょっと痩せたよ・・」
    弟   「(苦笑)はぁ・・」

         間

    姉   「(手であおぐ)あっついね、今日・・」
    弟   「(笑顔で)ですねぇ・・(頷く)」

         間

    弟   「え?仕事は・・」
    姉   「うん、もう終わった・・お蔭様で・・え?(あなたは?)」
    弟   「ええ、僕も・・はい」
    姉   「お疲れ様」
    弟   「いえいえ・・(歯に当てるように息を吸う)はい」
    姉   「(微笑む)ねぇ」
    弟   「(会釈)」

         間

    姉   「・・あれ?今バイト何やってるの?」
    弟   「え?あぁ・・えーっと・・何て言えばいいんだろう・・あの・・マネキンとか棚とかをですね・・」
    姉   「うん」
    弟   「そういうのをこう・・会場に運んで?図面どおりにあれするっていう・・そう、組み立てるっていう(腕を組んで、照れ笑い)・・ええ・・何かそういうあれなんですけど・・」
    姉   「・・へぇ」
    弟   「・・ええ、まぁそういう仕事ですね」
    姉   「へぇ(頷く)・・何か面白そうね」
    弟   「あぁ(首を傾げる)そうでもないですけどね・・ええ」
    姉   「(頷く)」

         間

    姉   「ねぇ・・いや・・気にしてたからさ、隼人君何やってるのかって?・・うん」
    弟   「はぁ(会釈)」
    姉   「じゃあ割かしね・・(まともなバイトをしてるのねと言いたかったが、悪く取って欲しくなかったのでやめるが、うまい言葉がみつからない)こう・・体を動かす?・・ふーん・・そう」
    弟   「ええ」
    姉   「(微笑む)じゃあまぁ怪我には・・気をつけて」
    弟   「どうも」

         間

    弟   「(乗り気ではないが)あ・・あれだったらお茶でも?」
    姉   「(乗り気ではない)あぁ(腕をさすりだす)どうしようか・・(時計を見る)行く?」
    弟   「あぁ・・僕はもうどっちでも・・」
    姉   「・・そうか・・あぁ・・どうしようかな」
    弟   「あ、そんな別に無理しないでいいですけど」
    姉   「・・じゃあ・・今日はやめとこうかな」
    弟   「あ、はい」
    姉   「・・御免ね・・折角ねぇ・・会えたのに」
    弟   「いえいえ、また今度・・ええ」
    姉   「・・(軽く)そうね・・余裕のある時に・・うん、三人で・・改めて」
    弟   「ええ、是非・・」
    姉   「ねぇ・・」
    弟   「(会釈)」
    姉   「(明るいため息)」

         間
         
    姉   「あ、(鞄から封筒を取り出し)じゃあ早速だけど・・忘れないうちに・・」
    弟   「え?(まるでその事をわすれていたかのように)あぁ・・すみません・・助かります」
    姉   「いいえ・・」
    弟   「本当・・(苦い顔)」
    姉   「あ、一応中身確認してね」
    弟   「あぁ・・じゃあすみません失礼して(中を覗く)あ、確かに」
    姉   「またいつでも言って。私でいいから」
    弟   「(会釈)」

         封筒を両手で有難そうにもったままの弟
         ぎこちない空気

    姉   「仕舞いなって」
    弟   「あぁ(ポケットにしまう)あの・・早めに返しますんで」
    姉   「(苦笑)いつでもいいわよ、うん」
    弟   「(会釈)すみません」
    姉   「・・」
    弟   「・・」
    姉   「何?同級生?」
    弟   「え?」
    姉   「同級生か誰かなの?結婚するさ、お友達って」
    弟   「ええ、そうですね・・高校ん時の・・はい」
    姉   「・・」
    弟   「そうなんっすよ、是非来てくれって・・言われたもんで・・」
    姉   「ねぇ・・(お金)結構痛いわよね・・そういうの」
    弟   「そうなんですよね・・」
    姉   「・・」
    弟   「(苦笑)でもねぇ・・自分の貯金くずせって感じじないですか?正直」
    姉   「(苦笑)別にいいんじゃない?」

         間

    姉   「え?もう大分貯まったの?」
    弟   「え・・あぁ貯金ですか?・・半分位ですかね・・」
    姉   「(頷く)」
    弟   「ええ・・結構頑張ってるんですけどね・・」
    姉   「ねぇ・・そういう費用も応援してあげたいけど」
    弟   「あぁ、もう気持ちだけで・・十分です」
    姉   「え?でもいつ頃行くつもりの?予定としては」

         間

    弟   「(鼻をすする)まだ全然あれなんですけど・・まぁ・・でも・・来年の後半には・・ええ、何とか・・行こうかなって」
    姉   「・・そう」
    弟   「(会釈)」

         間

    姉   「何?一年位行くんだって?」
    弟   「(苦笑)まぁ、出来れば・・」
    姉   「え?具体的な場所とか・・」
    弟   「あぁっていうか・・色んな所を回ってみたいなって・・ええ」
    姉   「へぇ・・いいわね・・本当羨ましい・・」
    弟   「(苦笑)・・」

         間

    弟   「え?兄貴は最近どうなんですか?」
    姉   「・・まぁ大変そうだね」

         間

    姉   「殆ど休み無いし・・あってもねぇ・・何かしら用事があるみたいで」
    弟   「・・(苦い顔)」
    姉   「家にだってさ、寝に帰ってくるようなもんよ」
    弟   「(苦笑)大変だ」

         間

    姉   「ねぇ・・」

         間

    姉   「そうなの・・」

         間

    姉   「だからね、隼人君のこと凄く羨ましがってた よ・・だから何?やりたい事の為にね、頑張ってるわけでしょ?こつこつお金貯めて・・」
    弟   「・・」
    姉   「うん・・そういう人生の方が・・絶対楽しいってさ」
    弟   「・・(首を傾げる)」
    姉   「そうよ」

         間

    姉   「え?で何?家(実家)全然帰ってないんだって?」
    弟   「(苦笑)はい」
    姉   「・・何でよ」
    弟   「何でと・・言われても・・特にあれはないんですけど・・」

         間

    姉   「心配してるみたいよ、二人とも」
    弟   「(会釈)・・」

         間

    姉   「あ・・そう・・でね、ほら・・来月で定年でしょ?お義父様」

         間

    弟   「え?」
    姉   「(苦笑)あれ、知らなかった?」
    弟   「ええ・・あぁ・・あぁ・・そんなもんか・・」
    姉   「そうよ・・」
    弟   「そっか・・」

         間

    姉   「(鼻をすする)・・だからね・・お食事会でもやろうって・・出来ればね、退職する日にね、うん」
    弟   「(頷く)・・」
    姉   「うん・・こっちも何とか都合つけるからさ・・」
    弟   「・・」
    姉   「え、来れるでしょ?」
    弟   「え?・・あぁ・・そうっすね・・今は何とも言えないけど・・多分・・ええ」
    姉   「多分じゃ駄目よ、絶対空けてくれないと・・ね?」
    弟   「(頷く)・・じゃあ・・はい」
    姉   「(微笑む)」
    弟   「・・」
    姉   「ね?だからモロッコ料理楽しみにしてて」
    弟   「え?」
    姉   「だからモロッコ料理をね・・作るから。クスクスとか」
    弟   「・・お袋が?」
    姉   「(苦笑)なわけないでしょ」
    弟   「あ・・(義姉を指し)」
    姉   「・・そうです」
    弟   「あ・・(頷く)はぁはぁはぁはぁ・・」
    姉   「そう、今さ・・教室通ってるから・・うん・・こいう時こそねぇ・・私がやらないと・・立場的にもさ」
    弟   「・・そうっすかね」
    姉   「そうよ・・」

         間

    弟   「(頷く)じゃあ楽しみにしてます・・」
    姉   「はい」
    弟   「・・」

         間

    弟   「・・」
    姉   「・・何?お父さん定年だとは思わなかった?」
    弟   「・・まぁ正直・・」
    姉   「・・(微笑む)」
    弟   「・・」

         間

    姉   「・・何?」
    弟   「え?あぁ・・親父どうするのかなって、これから」
    姉   「え?これから?」
    弟   「ええ・・」

         間

    姉   「・・どうするんでしょうね」
    弟   「うん・・あの人何の趣味もないし・・」
    姉   「(苦笑)じゃあ聞いてみればいいじゃない」
    弟   「(苦笑し、首筋を描く)いや、まぁいいっすけど」
    姉   「・・(ため息)」

         間

    姉   「(時計を見て)あ・・じゃあそろそろ・・」
    弟   「あ、はい・・本当・・今日はどうも、本当」
    姉   「どういたしまして・・」
    弟   「・・(会釈)」
    姉   「本当・・頑張ってね」
    弟   「はい」

         間

    姉   「え、電車?(で帰るの?)」
    弟   「いや、一寸ここで・・ええ」
    姉   「あぁ、そう」
    弟   「(会釈)・・」
    姉   「詳しい事決まったらさ、連絡するから」
    弟   「お願いします」

         間

    姉   「・・じゃあ(行こうとする)」
    弟   「あ」

         姉、振り向く

    弟   「無理するなって・・兄貴に・・」
    姉   「(微笑)はい・・」

         間

    姉   「じゃあまた(退場)」
    弟   「有難うございました(頭を下げる)」

         明かり中山だけを照らす、笑顔のまま顔をあげる
         やがて表情も失せ、ゆっくりと頭をかきあげる
         三木入場、ハウスを覗いてる

    中山  「・・(ため息)」
         
         明るくなる
         間

    三木  「どうしたのかしら」
    中山  「・・え?あぁ」

         間

    三木  「・・(ハウスの住人)いなきゃいないでさ・・気になるね」
    中山  「・・」

         間
         小暮入場

    小暮  「もうすぐいいみたいです」
    三木  「ありがと・・え?内田君は」
    小暮  「はい、何か・・沢田さんと(話してました)・・ええ」
    三木  「ふーん」

         間

    小暮  「・・え?」
    三木  「(小暮に)いや・・ここの人さ・・いっつもいるのにさ・・今日はどうしちゃったんだろうなってさ・・」
    小暮  「・・(ダンボールハウスを覗き込む)」

         間

    三木  「どっかでね・・倒れてなきゃいいけど・・」

         間、内田、携帯を聞きながら入場、三人がハウスを見ているので

    内田  「あぁ・・そう・・じゃあやっぱ大変だったんだ・・はぁはぁ・・だろうね・・」

         間

    内田  「まぁでもよかったよかった・・うん・・はいはい・・はい、どうも・・ありがと、わざわざ・・はい・・じゃあおばさん達に宜しく言っといて・・うん・・そう、仕事中・・はい・・はーい(切る)」

         間

    三木  「・・何?」
    内田  「お袋・・親戚の叔母さんがね、今日退院出来たんだってさ・・」
    三木  「へぇ・・」
    内田  「ほら・・あの・・脳梗塞?とかそういうあれだったからさ・・リハビリがね・・相当大変だったみたいだけど・・うん・・でもやっと・・ねぇ・・そうですか・・」

         照明、内田だけを照らす
         他の三人退場

    内田  「・・(家族が協力して頑張ってたんだろうな・・と思いつつ)なぁ・・一年かかったんだもんな・・」

         間

    内田  「(うつむいて)まぁでも・・うん・・よかったね・・って感じですかね・・うん」

         間

         明かり変わる
         千葉の総合病院、叔母が脳卒中で緊急入院し、内田待合室にいるという設定
         かしこまっている内田

    内田  「・・」

         三人の従兄弟(長女(三木)、長男(中山)、次女(小暮))が歩いてくる

    長女  「ごめんね・・待った?」
    内田  「あぁ、全然全然・・うん」
    長女  「ねぇ・・(ため息)」

         間

    長女  「(安堵の笑顔)」
    内田  「え?」
    長女  「もうヘトヘト・・」
    内田  「(苦い顔)お疲れ様です」
    長女  「あぁ・・こちらこそ・・来てもらっちゃって・・ねぇ・・わざわざ」
    内田  「あぁ(苦笑して会釈)・・とんでもない」
    長女  「でも本当・・ありがと・・うん」

         雰囲気としては長女がつとめて明るく振舞い、長男は心ここにあらずといった感じ、次女はただ一点を見つめている
        
         間

    内田  「え?・・で?(大丈夫なの?)」
    長女  「うん・・とりあえず今日は・・そう・・お父さん残して・・」
    内田  「(頷く)」
    長女  「そう・・まだ先の事は・・全然・・あれなんだけど(分からない)」
    内田  「(頷く)・・」
    長女  「そう・・」
    内田  「・・」
    長女  「(ため息)まぁとりあえずそんなところ」
    内田  「っすっか」

         間

    長女  「(やっと落ち着いたという意味を込めて、内田の肩に手を当てる・・深いため息)もういや」
    内田  「(その空気につられ、苦笑)」

         あっさりと手を引っ込め、弛緩した表情で髪をかきあげる

    長女  「え、でも本当久しぶりだよね?」
    内田  「・・うん」
    長女  「ねぇ・・だよね」
    内田  「(頷く)」
    長女  「私さ・・最初誰か判らなかったもん・・でも・・あれだね、伯父さんに似てきたね」
    内田  「(苦笑)そうかね」
    長女  「うん・・そっくり・・え?ひょっとして(内田の額を上げ)」
    内田  「いやいや、ここだけはお袋似だから」
    長女  「そうかな」
    内田  「うわ、きつ(笑う)」
    長女  「(笑う)」

         二人、病院とは似つかない和やかな感じ

    内田  「(次女、長男は無反応なので)あ、すみません」

         次女、長男軽く会釈

    長女  「・・(空気を変えない自分の兄弟に苦笑する)」
    内田  「・・」
    長女  「え?何年ぶりかな?」
    内田  「・・あぁ・・え・・二十年?」
    長女  「え?そんなに?」
    内田  「(苦笑)」
    長女  「へぇ・・あぁ、でもそっか・・そんな経っちゃったんだ(フフフ)」
    内田  「うん・・俺が中学上がる前だから」
    長女  「そっかそっか・・へぇ・・凄いね・・そっか」
    内田  「ね・・」

         間

    長女  「で、そうなのよ・・(次女、長男)二人とも覚えてないんだって・・」
    内田  「・・(やっぱり)まぁそうでしょ」
    長女  「ねぇ、もうさ・・あんなによく遊んで貰ったのに・・一寸酷くない?」
    内田  「それはしようがないよ・・(二人に)ね」
    長男  「・・すみません」
    次女  「(会釈)」
    内田  「いえいえ・・まぁでも二人共・・すっかり・・うん・・(上手い言葉がみつからない)ねぇ・・そっかそっか」
         長男、次女、困り笑顔

         間

    内田  「え、三人ともまだ家にいるの?」
    長女  「もう直子(次女)だけ」
    内田  「あ・・へぇ・・」
    長女  「そう・・だからうちらも三人で会うの久しぶりなのよ」
    内田  「あ、そうなんだ・・へぇ・・」

         間

    長女  「え?伯母さん(内田の母)から?」
    内田  「あ、そうそう・・昼頃かな?連絡あって」
    長女  「(頷く)」
    内田  「(お袋は)明日来るみたいな事言ってた」
    長女  「あぁ、聞いた・・うん・・でもあれだったらいいって言っといてくれない?ねぇ、遠いんだし」
    内田  「(苦笑)」
    長女  「ねぇ・・もう本当・・突然なんだもん・・もう参っちゃったよ」
    内田  「・・でも婆ちゃんもそうだったんでしょ?(脳卒中で倒れた)知らなかったけど」
    長女  「そう・・だからさ、伯母さんも・・気をつけないと・・ねぇ」
    内田  「ねぇ・・」
    長女  「そうよ・・いや、本当冗談じゃなく」
    内田  「(苦笑)」
    長女  「だってあれでしょ?一寸前検査入院してたんでしょ?」

         間

    内田  「・・え?」
    長女  「え、知らなかったの?」
    内田  「え?本当それ」
    長女  「・・みたいよ」
    内田  「えぇ・・何じゃそれ・・」
    長女  「まぁ・・問題なかったから・・言わなかったんじゃない?」
    内田  「・・そうっすか・・」
    長女  「(苦笑)まぁ気にしない気にしない」
    内田  「(苦笑)」

         間、内田だけ頷いている

    内田  「え?何・・いつ倒れたの?」
    長女  「・・(次女を見て)昼でしょ?昼ご飯食べてて」
    次女  「うん・・」
    長女  「そう、今(次女を顎で示す)この人働いてないのよ。もう半年位だっけ?」
    次女  「・・」
    長男  「おい」
    長女  「・・何よ」
    長男  「言ってんなよ、そういう事よ」
    長女  「だって本当の事じゃない・・(内田に)そうなのよ」
    内田  「(苦笑)・・うん・・(話しを変えようと)え?それまでは全然あれだったの?」
    長女  「うん・・血圧の薬はね・・前から飲んでたんだけど・・」

         間

    長女  「(あっけらかんと)もう『ハァ(何で)?』って感じ」
    長男  「(ため息)」
    長女  「ねぇ・・本当怖いわよ」
    内田  「(曖昧な笑顔)」

         間

    内田  「え・・で、まだ細かい事は分からないわけだ」
    長女  「そうね・・うん・・目を覚ましてからでないと」

         間

    長女  「覚まさない可能性もあるけど・・」
    内田  「・・」
    長女  「(思い空気を払拭するため)まぁ大丈夫でしょ」
    内田  「うん、大丈夫大丈夫・・(頷く)」
    長女  「・・」

         間

    長女  「浩一君は何?今東京に居るんだって?」
    内田  「そう・・」
    長女  「えぇ・・それでも遠かったでしょ」
    内田  「あ、でもあれだよ・・ここまで正味二時間・・位かな?一寸迷ったからあれだったけど・・うん」
    長女  「あぁ・・じゃあ・・ね・・割と・・」
    内田  「うん・・近い近い・・」
    長女  「へぇ、そっかそっか・・」

         間

    長女  「え?いつから東京?」
    内田  「っとね・・大学の頃から?・・うん、ずっと」
    長女  「へぇ・・そっか・・」
    内田  「(会釈)」
    長女  「あ、じゃあそのまま?仕事も・・そっちで(東京)」
    内田  「・・一応」
    長女  「そっか・・」
    内田  「うん・・」
    長女  「何・・サラリーマン?」
    内田  「まぁ・・そういった・・感じかな?うん」
    長女  「ふーん・・そっか・・あ・・私さ・・5年前?かな・・一応結婚してたんだけど・・もう・・(指で×印)なの」
    内田  「あぁあぁ・・うん・・聞いた聞いた・・」
    長女  「まぁ子供もね・・いなかったし・・」
    内田  「うん・・でも智ちゃん(長女)だったら・・また・・ね」
    長女  「(苦笑)ありがと」
    内田  「・・」

         間
         内田、咳払い、鼻をすする

    内田  「あ、そういえばこの前さ・・馬場(従兄弟らが以前住んでいた)のあそこらへん通ったよ」
    長女  「馬場?(急に言われたのですぐに飲み込めない)・・あぁ、高田馬場ね。へぇ・・え、うちどうなってた?」
    内田  「あぁ・・何か・・設計事務所?になってたかな」
    長女  「・・へぇ」
    内田  「周りも・・だいぶ変わっちゃってた・・うん」
    長女  「・・だろうね」
    内田  「そう・・随分変わったんじゃないかな・・だって高い建物なんてさ、前無かったよね」
    長女  「ないない・・全然(頷く、少し寂しげな笑)」
    内田  「でしょ?だから・・そうだよ・・かなり変わったんだよ(苦笑)」
    長女  「そっか(頷く)・・何か複雑だね・・そう聞くと」
    内田  「(苦笑)」
    長女  「(一寸しんみり)・・」
    内田  「あ(咳払い)でも叔母さんの料理をさ、皆で食べてたんだなって・・うん・・それは思い出した」
    長女  「え・・何で?」
    内田  「いや、どっかからいい匂いがしてさ・・急にそれがね・・うん・・蘇ってきて」
    長女  「へぇ・・」
    内田  「ほら、あの・・うちさ、商売やってたからさ・・昔から飯食うのバラバラだったじゃない・・だから智ちゃん家みたいにね、一緒に食べるっていうのがさ・・凄く羨ましくって・・」
    長女  「(苦笑)」
    内田  「で、ほら、叔父さんが厳しい人だったじゃない?だから皆黙々と食べてて・・」
    長女  「(苦笑)」
    内田  「ああいう緊張感がさ・・凄い新鮮でさ・・うん・・そういうの思い出してた」
    長女  「・・(苦笑、弟妹に)だってさ」

         間

    内田  「それだけかな、収穫は」
    長女  「・・そっか・・でも・・へぇ・・」
    内田  「そう・・だから・・叔母さんが倒れたって聞いた時さ・・(長い間)うん・・何かその光景がさ・・何だろ・・まぁいいや」
    長女  「・・(微笑みばがらもまばたきを繰り返す)」
    内田  「まぁそんなところです」
    長女  「そっか・・」
    内田  「(頷く)」

         間

    長女  「・・(咳き込む)じゃあ退院祝いはさ・・浩一君も来てよ・・喜ぶから」
    内田  「あぁ、勿論、もう絶対行きますよ・・行く行く」
    長女  「(微笑む)あ・・じゃあ番号教えてもらっていい?(携帯を取り出す)」
    内田  「とね・・あ、じゃあ貸して」
    長女  「はい(手渡す)」
    内田  「(入力)これです」
    長女  「じゃあ後で鳴らすから」
    内田  「絶対呼んでよ」
    長女  「(笑顔)」
    長男  「(ため息)」
    内田  「・・」
    長女  「何?」
    長男  「え?」
    長女  「だから何よ?」
    長男  「・・後でいい」
    長女  「何が?」
    長男  「だから後でいいっつうの」
    長女  「いいから言いなよ・・ねぇ」
    内田  「・・」

         間

    長男  「だ(から)これからの事さ・・ちゃんと話さない?」
    内田  「・・」
    長女  「え?・・今から」
    長男  「(頷く)まぁ」
    長女  「だって・・えぇ・・(一寸苛ついて)何?どうしても今日じゃなきゃ駄目・・かな?」
    長男  「だってまた集まるのもさ・・面倒じゃん・・だったらさ・・ねぇ」
    内田  「・・」
    長女  「・・(わき腹を掻く)え?何か・・言いたい事でもあるの?」
    長男  「いや・・だからさ・・まぁ親父にさ・・色々やらせませんかって・・じゃないと直ちゃんにさ、負担いっちゃうしさ・・ねぇ・・俺らだって・・あんま余裕ないわけじゃん」
    長女  「・・」
    長男  「親父ずっと家にいるんだからさ・・言い方悪いけど・・うん、こき使った方が?いいんじゃないかなって・・そう思わない?だって今までさ・・家の事何もやってこなかったわけでしょ・・ねぇ、だったらこういう時こそさ・・やらせるべきでしょ」
    長女  「・・(腕を組む)」
    長男  「いや勿論ね、俺もやる事はやりますよ。ただね、その何?あの人だけさ・・特別扱いしないで欲しいって・・言いたいのよ・・俺は」
    長女  「(ため息)でもさ・・別に特別扱いしようなんてさ、誰も言ってないじゃん」
    長男  「いや・・絶対そうなるんだって・・ちゃんとあれしないと・・」

         間

    長女  「(長男の事)この人ね・・お父さんと仲悪いの、凄く」
    長男  「何だよそれよ・・関係ねぇっつうの・・っていうかマジで心配してるんですよ、俺は」
    内田  「・・」

         間
         
    長女  「(次女に)だってさ」

         間
         視線が次女に向かってる事にようやく気付く

    次女  「え?あぁ御免・・一寸今・・うん・・(考えられる余裕がない)・・話聞いてなかった・・何?」
    長男  「・・(ため息、舌打)」
    次女  「え何?」
    長男  「・・もういい」
    次女  「え、何が?」
    長女  「・・」
    内田  「・・(頷く)」

         間

    長女  「でもまぁ・・こんなとこでさ、あれしてても仕方ないから・・ちゃんと落ち着いてさ、あれしようよ(内田に)そう思うでしょ」
    内田  「・・そうね」
    長男  「・・」

         間

    長女  「時間も時間だしさ・・何か食べに行かない?ね?あれだったらそこで話せばいいし」

         間

    長男  「・・」
    長女  「(直子に)ね、そうしよう」
    次女  「・・」
    長女  「大丈夫だって・・絶対大丈夫だから」
    内田  「・・(頷く)」
    次女  「(ため息、表情に余裕が出てくる)うん・・もう平気・・」

         間

    長男  「・・」
    長女  「あ・・(内田に)よかったら一緒に」
    内田  「あ・・うん・・でも今日は・・」
    長女  「え?一寸位いいじゃん」
    内田  「うん・・また・・近いうち来るし・・うん」
    長女  「・・そう?」
    内田  「・・すみませんね」
    長女  「いえいえ・・こちらこそ・・折角来ていただいたのに・・何のお構いも出来ませんで」
    内田  「とんでもない・・そんな」

         間

    長女  「じゃあ元気になったらさ・・本当・・やりましょうよ」
    内田  「あぁ、そうね・・是非呼んでください」
    長女  「(微笑む)」
    内田  「(微笑む)」
    長女  「・・ね、いつになるか分からないけど・・」
    内田  「・・いやいや、すぐだよ」

         間

    長女  「あ、じゃあとりあえず出ましょうか?」
    内田  「うん」

         兄弟ゆっくりと下手へ
         明かり、残された内田だけ照らす
         
    内田  「・・(ため息)」
         
         間
         三木、中山、小暮上手から入場、板着き
         明かり変わる

         間

    三木  「大変だったろうね・・」
    内田  「ね(頷く)・・」
    三木  「・・」

         間

    内田  「ま、お蔭様でって報告がね・・あったみたいです・・」
    三木  「・・(頷く)」
    内田  「・・(鼻をすする)」

         間

    三木  「(内田の重い空気に)え?何?」
    内田  「え?あぁ・・別に・・何でも・・」

         間
         内田、何とも言えない気持ちを軽く引きずったまま、腕を組みヨタヨタと小さくひと回り、ふと立ち止まって

    内田  「あ・・話変わるけどさ・・そこの人もう帰ってこないよ」
    三木  「え?」
    小暮  「・・」
    中山  「・・」
    三木  「嘘・・何で?」
    内田  「家族からね、捜索願が出てたらしくって・・今日保護されたんだってさ・・」
    三木  「・・あ・・何だ・・そういう事か・・え、何で知ってるの?」
    内田  「そう・・沢田さんがね、丁度その現場にいたらしくって・・」

         間

    内田  「割と普通に答えてたってさ、この人・・っていうか沢田さん」
    三木  「・・は?」
    内田  「そこにいた人もね、沢田さんって名前だったらしいよ・・」
    三木  「・・へぇ」

         間

    内田  「いたんだね・・家族」

         内田、ハウスを眺め

    内田  「(撤去)そろそろ行きますか」

         食べ物の匂いが漂っている

    三木  「(鼻をクンクンさせる)っていうかさっきから気になってたんだけどさ」
    内田  「ん?」
    三木  「何かいい匂いしない?」
    内田  「(クンクン)あぁ」
    小暮  「(クンクン)」
    三木  「あぁ・・確かに」

         間

    内田  「醤油?」
    三木  「かな・・」
    内田  「(頷く)」
    三木  「・・」

         小暮は発言せず、ただ同意の相槌

    三木  「何処からかね」
    中山  「・・」
    内田  「あぁ、また腹減ってきた・・」

         四人、ほぼ同時に一瞬空を見上げる
         それぞれの家族の夕食の風景を思い出して
         長い間

    内田  「(時計を見て)まぁ、じゃあパッと終わらせて・・さっさと帰りましょうよ・・もう耐えられないわ」
    三木  「あ・・じゃあさ・・これ終わったらさ、食べに行かない?」

         間

    内田  「あ・・いいけど・・何?珍しいじゃん」
    三木  「うん・・何か・・よく分からないけど・・皆で食べたいなって(照れ笑い)うん」
    内田  「あぁ(頷く)じゃあ・・定食屋にしない?」
    三木  「あ、私もそう思った」
    内田  「お、気が合う気が合う(握手)」
    三木  「小暮さんもどう?」
    小暮  「(遠慮がちに)あぁ、じゃあ」
    三木  「え?・・中山君は?(食事行かない?)」
    中山  「・・あ(考える)」

         間

    中山  「・・はい」
         パッと暗くなる
                        <終わり>
         

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